サンライズロボット研究所

指南講座
2025.05.02

サンライズロボット研究報告:コックピット編 第2回「フリッカ(後編)」(『重戦機エルガイム』より)

第2回 スパイラルフロー 「フリッカ」(後編)

 

 

◆なぜ「ドッキングセンサー!」と叫ぶのか

 エルガイムの搭乗シーンで思い出されるのが、ダバ・マイロードの「ドッキングセンサー!」の掛け声である。あとあの最高のBGMも(♪BGM集Vol.1 ❝進撃エルガイム❞)。

 それはさておき、なぜダバは毎回「ドッキングセンサー!」と叫ぶのだろうか。安易な発想で考えるならば、システムの発動に必要なキーとなっているというのが浮かぶが、それが個人を特定する声紋分析であった場合はファンネリア・アムがエルガイムのパイロットになれないという矛盾が生じてしまう。つまり、ヤーマン王家に関係する人物にしか操縦できないようにするという理由からの声紋認識機能はないと考えられる。

 単なるダバの搭乗ルーティーンという説も捨てがたい説得力があるが、ここでは敢えてエルガイムとフリッカの変形合体システムを起動させるキーになっている説を推したい。先に声紋認識は否定しておいてそれを採用するのはなぜか。

 まず変形の実行キーであるフリッカの逆三角形ボタンがデカすぎる。しかもメインコンソールの中央部にあるため、間違って押す可能性が非常に大きい。これを押すたびにフリッカが変形してしまっては面倒だし、そもそも危険だ。つまり安全装置が必要で、それが「ドッキングセンサー!」の合言葉(=音声認識によるシステムの起動は今やHeysiriやOKGoogleでも存在する)なのではないか。と、考えればファンネリア・アムでもガウ・ハ・レッシィでも、それこそミラウー・キャオでも、はたまたセムージュ・シャトの玄田哲章ボイス(第29話)であってさえエルガイムとの合体システムの発動は可能であり、しかしそれを知らない人間には起動できないというセキュリティ機能も持たせることができるのだ。

 

 

◆エルガイムのコックピット、初期設定

 フリッカのデザイン初期設定では、すでにバイク的な乗物がコックピットになるというアイデアが採用されていたことがわかるが、その形状は決定稿とは大きく異なる。乗物というよりは簡易的な脱出装置のようでもあるし、むしろ耐G機能や視界の確保に重点を置いたデザインとなっている。初期稿にはパイロットの脊椎から情報を伝達する機能もあるネックバンドも描かれており、ヘビーメタルが単なるマシーンというより有機的な部分も持つ存在であるという発想を垣間見ることができて非常に興味深い。

 パイロットの頭部をモニターで覆うことで視界を確保するという永野護氏のアイデアはこの時点ですでにあったようだが、これをフリッカの変形という決定稿デザインにまで落とし込んだのはクリンナップを担当した北爪宏幸氏であると言われている。

 

 

◆スパイラルフロー フリッカのデジタル色見本

 40年前の色指定表では当時のセル絵の具の品番で色が指定されているわけだが、現在のデジタル彩色でそれを同じように再現するには、かなりの微調整が必要となる。現時点での決定稿であるデジタル彩色見本を公開するので、彩色の際の参考にしてほしい(※一部は当時のセル彩色の色見本)。注目点としてはエンジン部分の両端にグリーンの差し色が入っているところだ。翼端灯(車幅灯?)の機能があるのか、あるいはウィンカーなのかは不明だが、フロントカウル両端にも同様の色が入っていることから、何らかの機能を持つと考えられる。細かい部分だし過去の彩色見本では再現されていない場合もあるため、新たな塗り起こしによるこの点は見逃さないようにしてほしい。

 

 

 

 

◆スパイラルフロー フリッカ、総括

 スパイラルフロー・システムとして初の実用化を果たしたフリッカであるが、そのデザイン、変形機構などは初登場から40年以上が経過した今でも色褪せない魅力を放っている。いわゆるエアバイク(※車輪を持たないバイク)と言えば『戦闘メカ ザブングル』におけるホバギー(※扇風機に乗っているようなものなので、エアバイクというよりはヘリに近いが)や、左腕に銃を持つ宇宙海賊の作品や、星の入った竜神の球を7個集める物語に登場するメカなどが有名であるが、それに比肩する代表的な存在としてこのフリッカも挙げられるだろう。

 主人公が乗るロボット以外の乗物でこれほど存在感のあるメカも珍しく、この第二の主役メカとも言える存在がこれまでほとんど立体化されていないのはとても残念だ。昨今のホビー業界では各関節がフル可動する美少女プラモデルやそれに付随するメカも数多くキット化されていることだし、同スケール(つまりかなり大きなサイズ)での完全変形フリッカがそろそろ実現してもいい頃合いではないだろうか。

 この優れたデザインを理解するには、立体物を手に取るのが最も効果的であろうから……。

 

 

 

 

第3回 スパイラルフロー「ビュイ」(前編)に続く

◇次回予告

 フリッカと同じようにエルガイムMk-Ⅱのコックピットとして採用されたスパイラルフロー・システムの発展型。こちらは360度の視界を確保し、耐G機能も向上したことでヤーマン族の技術を源流としたヘビーメタルのコックピットの完成形とも言える。このビュイについて、エルガイム(フリッカ)との違いやその互換性について研究していく。

 

 

 

※参考資料

『重戦機エルガイム』オフィシャルサイト

https://l-gaim.net/

発売中のHDリマスター版Blue-ray BOX(期間限定生産)や本作品に関するすべての情報はこちらからどうぞ。

 

プレミアムバンダイ『重戦機エルガイム』関連商品ページ

https://p-bandai.jp/chara/c0139/?page=1&n=60&C5=AA&sort=1&srsltid=AfmBOor9Gk_XwKggLEsk7NXk-DT-vlvP0miWJMpKN1wWXhS5xKHeBIHD

バンダイのエルガイム関連商品。HI-METAL Rシリーズのエルガイム&エルガイムMk-Ⅱなどの情報が盛りだくさん。新作プラモデルHG1/144カルバリー・テンプルやスペシャルコーティングHG 1/144エルガイムなど魅力的な商品の情報はこちらで。