サンライズロボット研究所

指南講座
2025.05.16

サンライスロボット研究報告:コックピット編 第3回「ビュイ(前編)」(『重戦機エルガイム』より)

第3回 スパイラルフロー「ビュイ」(前編)

 

 

◆ヤーマンとポセイダルの技術が融合したスパイラルフローの完成形「ビュイ」

 それ自体が独立したフロッサー(※エアバイク的な乗物)として機能するヘビーメタルのコックピット、スパイラルフロー・システム。ヤーマン族独自の技術としてエルガイムに採用されたそれは周囲270度の視界を誇り、耐衝撃、耐Gにも優れたものであった。しかし、ダバ・マイロードやミラウー・キャオが求める理想形には程遠く、彼らは周囲360度すべての視界を確保できる完璧なスパイラルフロー・システムの完成を目指していた。

 が、反乱軍に参加したことで何かと忙しかったダバとキャオは、エルガイムのスパイラルフローであるフリッカを改良するヒマがなく、完璧なシステムの実現は先送りになっていたのだった。破損したアモンデュール「スタック」の鹵獲はまさに幸運であり、しかもそれ以前にキャオが偶然発掘していた「ブラッド・テンプル」の頭部を流用することでエルガイムMk-Ⅱの開発時間が大幅に短縮できていなければ、スパイラルフロー・システムの完成形である「ビュイ」が開発されることはなかったかもしれない。そう考えると、天才であっても多忙すぎると発明は後回しになってしまうわけで、それではもはや凡人と同じと言っても過言ではない。つまり、忙しすぎる日々を送るのは危険というわけである。

 話を戻そう。

 スパイラルフロー ビュイはダバとキャオにとっての理想形であり、それは次世代ヘビーメタルのコックピットとしても画期的な新技術となったのである。

 

 

◆ビュイの特徴

 先行型となるフリッカはエルガイムに格納される際に変形をしていたが、ビュイにはそのような特殊機構は備わっていない。また、エルガイムと異なりエルガイムMk-Ⅱの胸部格納スペース内は全周モニターで覆われているため、ビュイのキャノピーは各種情報などのモードディスプレイとして使用される。

 フリッカのようにフロッサー(※エアバイク)として日常生活で使われるシーンも少なく、移動手段としてはさほど活用されてはいなかったようだ。ビュイが使われ始めた時期からは戦場は宇宙空間へと移行していた頃であり、宇宙空間での使用が多かったことからも、ダバの個人的な移動手段というよりも脱出コックピットや簡易的な宇宙船としての使用例が多かったように見える。これはビュイの機動性がフリッカよりも高かったことにも起因すると考えられるが、ダバやキャオたち若い世代と、ダバ・ハッサーのような古い世代とのセンスの差、あるいはものの考え方への柔軟性の違いによるのかもしれない。バイクは地上で使うモノであるという固定概念がフリッカを生んだとするなら、バイク的な形をしているだけの宇宙でもどこでも使える乗物というビュイでの認識の差が、フリッカとビュイの性能の外観的特徴の大きな違いにもつながっているのではないだろうか。

 

 

◆ビュイとエルガイムMk-Ⅱとのドッキング

 エルガイムのように頭部が上方へとせり上がり、フリッカを格納するような特徴的なギミックを持たないエルガイムMk-Ⅱでは、胸部前面のハッチが開き、ビュイを格納するだけのシンプルなシステムとなっている。ビュイは正面から胸部へと侵入し、機体内部で180度回頭することでドッキングは完了する。ビュイは胸部内の中心で宙に浮いた状態を保っている。フリッカは床面に固定されていたことから下部の視界確保が難しかったが、ビュイは浮遊することでそれをクリアしているわけだ。

 エルガイムに比べると非常にシンプルで簡潔な合体シークエンスとなるが、これはシステムの完成度の高さからくるものであると同時に、主役メカへの搭乗シークエンスを見せ場として用意するだけの尺が足りないという作劇場の事情もあるのだろう。シリーズも中盤を過ぎれば物語も立て込んできている頃合いであり、テンポ良くストーリーを進めるためにはいちいち搭乗シークエンスを見せている場合ではないというのも、40年経過した今なら理解はできる。しかし、やはりビュイとエルガイムMk-Ⅱとの合体シーンはもう少しねちっこく見せて欲しかったというのが熱烈ファンの正直な要望でもあるのだが……。

 

 

◆エルガイムとの互換性、その真説とは⁉

 ビュイとフリッカ、このスパイラルフロー・システムにおいて最も印象的なシーンと言えば、もちろん「最終話のエルガイムMk-Ⅱからエルガイムへの乗り換え」である。

 大破したエルガイムMk-Ⅱを捨て、ビュイに乗ったままエルガイムへと乗り込むダバ。それを迎え入れ、ダバとキスをして入れ替わるアム。かつての主役メカに立ち戻り、最後の敵を打ち倒すこのシーンに感動しない者などいるだろうか、いやいまい。

 だが、研究者としてここに疑問が残るのもまた事実である。それはエルガイムの首の下にある格納スペースに、ビュイが入るのかどうかという点だ。設定画を見比べて欲しいのだが、永野ファンの贔屓目をもってして必死こいて薄目で見ても、ビュイの方が大きく見える。これがエルガイムの首下格納スペースにそのまま入るとは到底思えないのである。

 システム的に見ても無理がある。フリッカはカウル(の内側のモニター)がパイロットを覆うことで広い視界を確保したが、ビュイは細っそいキャノピーに補助的に情報が映し出されるだけだ。デザイナーであり設定画をクリンナップした永野護氏の注意書きにあるとおり、そのままエルガイムに使用した場合、その視界は極端に限られてしまう。そもそもエルガイムへの使用を想定してないとは言え、スパイラルフローの完成形であるビュイがエルガイムには使えない、あるいはその逆にフリッカがエルガイムMk-Ⅱでは使えないというのは納得がいかない部分も多い。

 これはどうしたものか。この大問題に結論は出せるのか。

 

 

 

第4回 スパイラルフロー「ビュイ」(後編)へ続く

◇次回予告

 後編では、ビュイにあってフリッカにないものや新規デジタル塗り起こしカラー設定画などの研究考察をお届けします。

 

 

※参考資料

『重戦機エルガイム』オフィシャルサイト

https://l-gaim.net/

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プレミアムバンダイ『重戦機エルガイム』関連商品ページ

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