サンライズロボット研究報告:コックピット編 第5回「ウォーカーマシン(前編)」(『戦闘メカ ザブングル』より)
第5回 「ウォーカーマシン」(前編)
◆ウォーカーマシンとは人型兵器なのか?
我々が親しんでいるロボットアニメに登場するいわゆる「ロボット」は、そのほとんどが兵器として開発されたものである。つまり戦闘用マシーンであり、その操縦席であるコックピットは既存の兵器のそれを模した構造である場合が多い。それらは戦闘機(飛行機)のコックピット構造を基本としたもので、操縦はレバーやペダル、膨大なスイッチ類で行われる。
しかし、このウォーカーマシンは違う。なぜならウォーカーマシンは兵器ではなく重機であり、基本的には採掘用重機の延長線上にあるロボットだからだ。ショベルカーやクレーン車などと同じものであり、本来であれば履帯(無限軌道)や車輪で移動する乗り物だったはずだ。それが、遠い未来の地球である惑星ゾラの環境では二足歩行が適していたために人型ロボットに進化したというわけである。この出自の違いこそがウォーカーマシン最大の特徴であり、その操縦方法が特殊である理由ともなっているのである。
つまり、ウォーカーマシンがハンドルで操縦するロボットであるというのも、元々がショベルカーみたいな物だから当然と言えば当然の話であり、戦闘用に設計されたわけではない重機ゆえに武器の扱いは後付けオプションであるという点を踏まえて置く必要があるということだ。今回の研究内容ではその点の理解が重要であるため、ここに敢えて記しておく。
◆ウォーカーマシンの居住性
通常、いわゆる兵器としてのロボットのコックピットは狭い。操縦するためのスペースだから当然なのだが、最低限必要な物しか配置されていないためパイロットである人が座れるギリギリの広さしかない。最近ではトイレが設置されている場合もあるようだが、生活の場とは考えられていないのが普通だ。だが、ウォーカーマシンは違う。なぜならウォーカーマシンは生活の一部として機能しているマシーンだからだ。
惑星ゾラの支配者は旧世界の文明を受け継いだイノセントと呼ばれる高位人種であるが、生物としては衰退しつつある存在である。滅びゆく彼らが星を継ぐ者として選んだのがシビリアンであり、彼らは過酷な惑星ゾラの環境に適応すべく肉体的に改良を施された人種でもある。この世界における経済基盤はブルーストーンと呼ばれる鉱石であり、それを採掘してイノセントに上納することがシビリアンにとって生活の糧を生むための労働の基本となる。つまり、ウォーカーマシンはそれを岩場から掘り出すための機械であり、採掘現場で生活するための拠点でもあり、移動手段でもあり、果ては身を護るための武器でもあるのだ。
だからほとんどのウォーカーマシンのコックピットには簡易ベッドが設けられており、そこで休養することができる。キャンプをする人ならわかるだろうが、一日限りの仮眠ならともかく、何日も続くクルマ生活を送る場合、車中泊できるスペースがあるかないかでは疲労度が大きく違ってくるものだ。過酷な環境に適応したシビリアンだろうが現代の東京で脆弱に育った都会人だろうが誰だろうが、人間は水平な場所で横になって眠ることができないと生きていけないし、疲労も回復しない。現在の長距離輸送トラックにも仮眠設備は備わっているように、簡易ベッドは長時間労働を強いられる者には必須装備なのだ!
ウォーカーマシンは過酷な労働環境を生き抜くための相棒といった位置づけであり、生死を共にする戦闘兵器とはまた違った価値観での感情移入をされる存在だと言えるだろう。それは従来のロボットアニメでは見られなかった価値観であり、ザブングルの世界観やウォーカーマシンが40年以上経過した現在でも人気を維持していることの一つの要因になっているとも考えられる。
ちなみに余談ではあるが、現在を生きる一般庶民の我々でもウォーカーマシンの雰囲気を感じられる乗り物がある。それは軽トラックである。あの軽快感、ペラペラで頼りない装甲、だが必要にして十分なコックピット内装と快適装備。あれこそまさにウォーカーマシンである。いやしかし、あんなものどこで乗るんだとかレンタカーにもないと思われるだろうが、実は大きめのホームセンターで手に余る商品を買うと自宅までの運搬用に借りられるのだ。借りる条件は店舗によってさまざまあるが、機会があればぜひ試してほしい。
ダッガータイプ(左上)ではトランクの蓋がせり上がり、簡易ベッドとなるように工夫されている。プロメウス・タイプ(左下)、ガラバゴス・タイプ(右下)は機体サイズがかなり大きく、それに伴いコックピット内も余裕のある設計となっているようだ。
機体サイズに対してコックピットが比較的広いクラブ・タイプ(左下)では、オプションで二段ベッドも用意される。オットリッチ・タイプ(右上)はベッドのスペースはなくシートがリクライニングしてベッドがわりとなる。
◇次回予告
第6回「ウォーカーマシン(後編)」 「なぜハンドル操作なのか?」へ続く。誰もが疑問に思うハンドルさばきによるウォーカーマシンの操縦…。さて
※参考資料
『戦闘メカ ザブングル』 オフィシャルサイト
本作品に関するすべての情報はこちらからどうぞ。リマスター版Blue-ray BOXも好評発売中です!
〇プレミアムバンダイ『戦闘メカ ザブングル』関連商品ページ
https://p-bandai.jp/chara/c2654/?page=1&n=60&C5=AA&sort=1
ザブングル関連商品の情報です。予約状況などは刻一刻と変化していくのでこまめにチェックをお勧めします!
〇サンライズ スピリッツ(英雄たちの魂が集う場所)
HI-METAL R ザブングル
https://p-bandai.jp/item/item-1000225998/
HI-METAL R ウォーカーギャリア
https://p-bandai.jp/item/item-1000210846/
〇ハセガワ 『戦闘メカ ザブングル』クリエイターワークス
1/500スケールアイアン・ギアーや1/72スケールザブングルなど、大スケールで再現されたザブングルのプラモデルが好評発売中!
http://www.hasegawa-model.co.jp/item/project/xabungle/
〇グッドスマイルカンパニー MODEROID ザブングル
現代風のデザインアレンジとともに完全変形・合体を再現。武器もフルセットで付属し、折れた翼などジロン搭乗機の再現も可能という至れり尽くせりな内容です!
そして、43年の年月を経て…最新映像技術により制作された実験動画はこちらから!!
https://roboken.sunrise-world.net/video/
『戦闘メカ ザブングル』の魅力を❝再❞発見せよ!