調査研究局

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RESEARCH & INVESTIGATION DEPARTMENT

映像や設定資料を紐解いた研究成果や、作品をより深く理解できる研究記事を公開しています。

サンライズロボット研究報告:コックピット編 第23回「SPT(スーパー・パワード・トレーサー)」前編(『蒼き流星SPTレイズナー』より)

第23回「SPT(スーパー・パワード・トレーサー)」前編

 

 

 

 

◆頭部がそのままコックピットになるもうひとつの作品

 スーパー・パワード・トレーサー(※以下SPT)とは異星の人類であるグラドスの技術によって開発・実用化された人型兵器の総称である。全高はおおよそ10メートル前後と小型であり、ほぼ頭部全体がコックピットとなっている。頭部上面はキャノピータイプの乗降ハッチとなっており有視界戦闘にも対応可能だが、AIやコンピューター、さらにレーダー類などの電子機器による操縦補佐によって操縦自体は非常に簡易に行えるシステムであった。さらにこのキャノピーは耐久性に優れ、地球製のミサイル程度の直撃すら無傷で耐えるほどの性能を有していた。

 さて、頭部がまるごとコックピットになっているロボットといえば、前回研究報告した『太陽の牙ダグラム』(1981年)に登場するコンバットアーマーを思い浮かべる人も多いだろう。全高も同じ程度であり、頭部全体がコックピットになっている点も似ているが、SPTには顔と呼べる部分がデザインされている点が大きな違いとなっている。大河原邦男氏によるデザイン画稿ではSPTの頭部は概して胴体に対して大きく描かれており、コンバットアーマーよりも特異なスタイルであることがわかる。それではなぜ、陸戦に限定された制約の多いコンバットアーマーとは異なり、異星人が開発した宇宙でも地上でも活動可能な汎用人型兵器であるSPTは、頭部がコックピットとされたのだろうか。

 その大きな理由は、SPTが持つ他に類を見ない高い機動性能にあった

 

 

コンバットアーマーと同様にSPTの全高は10メートル前後と比較的小型である。機体デザインは全体的に航空機をイメージとした直線的なものが多く、劇中での俊敏な戦闘シーンと合わせて高機動兵器という印象が強く残る。逆にコックピットとなる頭部キャノピーは曲面で構成されており、ここだけ見ると宇宙船のような印象も受ける。(※こちらの設定画の中では、グラドスがデウズスと初期名で記載されている。)

 

 

◆頭部を中心にして機体の向きを変える高機動

 宇宙空間が主戦場と想定されたSPTは、空間戦闘における回避行動に最大の特徴がある。もちろん主兵装となるレーザード・ライフルの破壊力も脅威だが、とにかく地球側が誇る宇宙用戦闘機ではまるで歯が立たないほどの高い機動性と運動性こそが、SPTをこの世界で最強兵器たらしめている理由であると考える。

 つまり、前方に向かって飛行していた機体が、その頭部を中心として反転してこちらに向かってくる。正面を向いていた機体が振り向くだけで方向転換をしてくるという戦法は、推進力によって方向転換をせざるを得ない宇宙用戦闘機では考えられない機動である。人型兵器である理由のひとつとも考えられるが、これに似た挙動はモビルスーツにおけるAMBAC(アンバック)にも見られる。あちらは質量移動による反作用を使った姿勢制御であるのに対し、SPTのそれはUFOの超機動に近いものがある。空間をクルクルと回転しながら反撃してくるSPTの戦闘描写は、1985年の放送当時において衝撃的だった。『超時空要塞マクロス』(1982年)における可変描写とドッグファイトをさらに進化させたようなSPTの戦闘シーンは、遠距離からの撃ち合いに終始してしまいがちな人型ロボット同士の戦いのジレンマを見事に解消していた。

 そして、その超機動をする際には回転の中心点となる頭部にコックピットがあれば慣性の法則の影響を受けにくい。これがまさに最大の理由なのではないだろうか。もちろんそれが暴論なのは承知の上であるし、異論も認めよう。だがそれよって、あの素晴らしくスピーディで動きのある戦闘シーンが作られたのであれば、多少の物理法則などグラドスの科学力によってどうにでもなると納得できてしまうのだ。

 

 

 

 

 

◆独立した人格を持ったロボット兵器

 レイズナーはグラドス星の技術で開発された第二世代SPTの試作機であり、アルバトロ・ナル・エイジ・アスカ(通称エイジ)専用とも言える機体である。これにはエイジの父であるケン・アスカ(地球人)が大きく関わっており、V-MAXシステムや機体管制コンピューターとして「レイ」と呼ばれる人格が備わっている。レイ以外にもフォロンという真の機体制御用人格まで隠されているのだが、この辺の詳細は省略する。SPTには一般的に機体制御用のコンピューターが搭載されているが、フォロンはパイロットの意思よりも機体の安全を優先するなど、操縦補佐の域をはるかに超える機体制御の全権限が与えられていた。

 ロボット兵器の操縦にコンピューターの介助が入るのは1985年当時には珍しい設定ではなかったが、コックピット内でパイロットに話しかけてくるロボット兵器というのは珍しい存在だった。しかも主人公であり専属パイロットでもあるエイジの指示を無視し、本人が気絶するほどの容赦ない機動で周囲の敵をせん滅して飛び去るというのは、大活躍を通り越して暴走にも等しい行動である。こうした独善的な行動は後に『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)でも見られるが、自分の愛機が勝手に動くというレイズナーに感じる恐怖とはやや事情が異なる。

 

レイズナーのコックピット詳細。頭部はほとんどが操縦席で占められ、上半分がキャノピーで覆われる。また、明確な顔を持つのはレイズナーとザカールくらいで、ほかの機種とは明らかな違いがある。これはレイズナーに搭載された「レイ」と「フォロン」の存在を暗示させる意図があったのか、はたまた主役メカとライバルメカを目立たせたかっただけなのだろうか。さらに、直立した機体への搭乗方法も設定されており、この辺りの描写に対するこだわりはダグラムにも見られる共通点と言えるだろう。

 

 

 

◇次回予告

次回は、SPTの操縦法、レイズナー以外のコックピット、総論をお届けします!

 

 

※参考資料

 

■蒼き流星SPTレイズナー オフィシャルサイト

https://www.layzner.net/

基本です。本作品に関するすべての情報はこちらからどうぞ。

 

■バンダイ魂ウェブ レイズナー商品一覧

https://tamashiiweb.com/item_character/layzner/

先日発表されたHI-METAL R レイズナーを含む関連商品の情報はこちらから。

 

■A-On STORE レイズナー関連商品一覧

https://a-onstore.jp/search/?keyword=%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%83%8A%E3%83%BC

 

 

■グッドスマイルカンパニー レイズナー関連商品

MF-73 minimum factory レイズナー & ザカール SPTカラーVer.

手のひらサイズのヴィネット(固定ポーズの情景再現モデル)にレイズナーとザカールが登場。お手軽にV-MAX発動の瞬間を再現できる。成形色違いのバリエーションも発売中。

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〇サンライズ50周年プロジェクト

https://www.sunrise-inc.co.jp/50th/