サンライズロボット研究所

指南講座
2024.05.31

第4回「オーラ・バトラーの開発」(『聖戦士ダンバイン』より)

◆オーラ・バトラー ~ショット・ウェポンの登場と功罪~

「この世界を支えるオーラの力を吸い込んで空を飛ぶ。この世界の生物の仕掛けと、地上の技術を結び付けたのが、ショット・ウェポン様だ」[バーン・バニングス/機械の館にて]

 

 「オーラ・バトラー」。それは、バイストン・ウェルの世界の源である生体エネルギー=オーラの力で作動する戦闘用ロボットの総称である。地上人ショット・ウェポンが開発したそれらは、強獣の甲羅や甲殻などを素材に用い、バイストン・ウェルの空に異形の騎士が飛ぶ時代を到来させた。また、同じく地上人のゼット・ライトが持ち込んだICの製造技術による運動制御も兵器としての実用性を高めた。このオーラ・バトラーの登場とその戦闘力に魅入られた者たちによって、バイストン・ウェルの地にかつてない戦乱が巻き起こるのであった。

 

オーラ・バトラーの開発

 バイストン・ウェルにおいても人々が寄り集まり、組織だって国というものを成立させている。そこに宗教的な対立はないが、信条や組織の利益などをめぐり、争いは起こってきた。そこでの戦闘というものは、剣や斧による格闘戦、飛び道具として弓矢、投石機を用いた、近現代の地上人から見れば原始的なレベルの激突にすぎないものであった。それが100年ほども続いて数か国の対立、小競り合いなどを繰り返す中、アの国で劇的な革新が起きる。ラース・ワウの領主ドレイク・ルフトが、エ・フェラリオにオーラ・ロードを開かせ、ひとりの地上人の召喚に成功したことが、その始まりであった。

 アメリカはカリフォルニアから召喚された若きロボット工学者――ショット・ウェポンは、バイストン・ウェルの地で大きな発見をした。バイストン・ウェル独自の法則ともいうべき、オーラの力の作用である。そして、それを科学的に解析し、地上の機械工学との結合をはかっていった。以降3回にわたり、オーラ・バトラーの開発に至る過程を整理し、ショット・ウェポンの天才性と功績、また、その背景にあった先行研究について解説していく。

 

 ドレイクがショットのために用立てた工房――その名も「機械の館」――を拠点とし、彼はまず強獣ガッダーなどの生体構造の研究に取り掛かる。それは、人の数倍の全身をもつとはいえ、単純な肉と骨、内臓ではあり得ない強獣のパワーとエネルギーの謎を追求するためであった。そして、強獣の甲皮が外気からオーラ力を取り込み、動力へ置換できる機能――昆虫における気管のような――をもつと判明したことで、ショットの想像は確信に変わる。バイストン・ウェルに満ちるオーラ力を、大きなエネルギーに転じるシステムを構築できるという確信である。

 強獣の生体組織から抽出した溶媒は「オーラ・セイバー・リキッド」と名付けられ、また、人工的に精製した筋肉組織「オーラ・マルス」との組み合わせにより初のオーラ・マシン「ピグシー」を作り出した。この開発と実証により、オーラ・マシン技術の進化は加速していく。特に、ショットが注力したのは飛行ユニットの開発であった。飛行する強獣は存在していたが、天はフェラリオの住まう水の国であるバイストン・ウェルにおいて、コモン界の者が空を飛ぶことは禁忌に近い形でおそれられていた。敵のいない無人の「制空権」を支配する者は、たやすくコモン界全土を支配できるだろう。そこに目を付けたのはドレイクか、ショットか――いずれにしても、慧眼というほかない。ドレイク自身が早い段階でオーラ・マシンを各勢力へ切り売りしたため、独占というほどには至らなかったが……。

 さて、ショットはオーラ・マシンを飛行させるための推進機関「オーラ・コンバーター」を開発し、グライ・ウィング「ミュー」とオーラ・マシン「ドロ」を作り出した。また、ドロに備えた圧縮型火炎放射器フレイ・ボムの実験では、奇妙な現象が起きていた。搭乗者によって、フレイ・ボムの出力に強弱が生まれることが判明したのである。搭乗者が異なるというのは、つまりそれらのオーラ力に大小があり、同じコモン人の中でも一定ではないということであった。

 こうしてオーラ力の化学・工学的な検証を積み重ねたショット・ウェポンは、いよいよ自身のロボット工学をオーラ・マシンの開発に取り込む。そして、その完成形をバイストン・ウェルの地において「戦い」を担う、誉れ高き騎士の姿においた。強獣が騎士と化したような、強固な甲皮と筋肉から成る四肢を持つ「オーラ・バトラー」の誕生であった。