サンライズロボット研究所

指南講座
2024.07.05

第9回「オーラ・ロード――生と死の境界」(『聖戦士ダンバイン』より)

 バイストン・ウェルに地上人を呼び込むために、ドレイク・ルフトらがエ・フェラリオを利用し開かせた「オーラ・ロード」。それは地上とバイストン・ウェルをつなぐ光の奔流であり、本来、人が「死」を迎えて肉体を離れ、魂のみの存在となってのみ往く道であった。このオーラ・ロードに関しては、不明の点が多く、いくつもの謎が遺されている。開かれる方法、そのために必要なエネルギーのボリューム、そして、此処から何処へつながっていくのか――。

 まず、知られていたことは「エ・フェラリオは地上界へつながる光の道を開ける」ことであった。だからこそドレイク・ルフトはシルキー・マウを捕らえてショット・ウェポンやショウ・ザマたちの召喚に利用したのであるし、経緯は不明だがマーベル・フローズンがナックル・ビーによって召喚されていたことも事実としてある。そしてこのエ・フェラリオがコモン界でオーラ・ロードを開くことはフェラリオにとっても禁忌であって、2名はその後に大きな罰を受ける(それらについては次章にて触れる)。

 

 ドレイク・ルフトはシルキ-・マウに対して、自分は「『バイストン・ウェルに真の平和をもたらしたいと考えている』が、それを理解しない勢力によって娘の命がおびやかされる」ことを理由に、地上人を召喚し力を貸してくれるよう求めていた。ここでは禁忌を破ってでも召喚する理由となりうる二つの例が示されている。 

 一つ目はバイストン・ウェルの真の平和、二つ目はリムル・ルフトの命を守るため、である。シルキー・マウがそのどちらに感じてオーラ・ロードを開いていたのかは、明らかでない。だが、何かが、エ・フェラリオたるシルキー・マウに禁忌を犯しても止む無しと思わせたのであろう。

 確認されているオーラ・ロードにはエ・フェラリオが開くものと、オーラ・マシンの力によるものがある。 

 どちらも光の柱が天を貫くように伸び、バイストン・ウェルの界=スペースを抜けて地上界に至る。この現象をオーラ・ロードが開かれた、とバイストン・ウェルでは認めるようだ。そして、この光の道を通り抜けて地上界からコモン界へ、コモン界から地上界へと人とオーラ・マシンが行き来したことは、本講座の読者がご存知の通りである。このとき、エ・フェラリオが開いた道では地上界の者をコモン界へ強制的に導くことが出来ている。これをドレイクらは地上人の召喚といった。

 

 一方で、オーラ・マシン――実例においては2機のオーラ・バトラー――ショウ・ザマ搭乗のダンバインとガラリア・ニャムヒー搭乗のバストール――が互いのオーラ力をぶつけ合い、その干渉と増幅が異常な振れ幅になった際に、オーラ・ロードが開かれてもいる。この現象は、認められる限りではオーラ係数に制限がないとされるダンバインと、新型のオーラ・コンバーターを搭載して以降のオーラ・バトラーの激突によって発生しており、また、いずれの場合もダンバインにはミ・フェラリオ(チャム・ファウ)が同乗していた。こうした環境から考えると、きわめて高出力のオーラ力と、コモンの住人よりも純粋な「魂」に近いフェラリオの存在が鍵となっているようである。

 

 実際に地上界とバイストン・ウェルをつなぐオーラ・ロードを発したバストールとの一件に加えて、トッド・ギネス搭乗のビアレス、バーン・バニングス搭乗のレプラカーンとショウ・ザマ搭乗のダンバインが相対したとき、ダンバインとそれらとの間でオーラ力が異常な光を示し、異空間と称すべき嵐の玉内部へ突入したり、海を割ったりするほどの力場が発生する現象があった。チャム・ファウはそれを「ジャコバ・アオンぐらいにしか出来ないことをやっている」と表現している。このことからも、オーラ・ロードの発現やそれに近い力のあらわれは、本来エ・フェラリオだけが行えることであったのだろう(エ・フェラリオの長ジャコバ・アオンがコモン界から特定の人物を水の国へ召喚する際にも、光の柱が介している)。そうして保たれてきた生と死の戒律、地上界とバイストン・ウェルの均衡を「機械」が打ち破ってしまったのだ。

 オーラ・マシン登場以降のバイストン・ウェルの動乱はまさに――そうしたそれまでの秩序の崩壊を、「世界そのものが恐れ、震えている」ことの表出であった。その発端は世界の平和と安定を求める志であり、事態を悪化させたのは「聖戦士」に託される力である。一見、この次第は矛盾しているように思えるが……あらゆる魂が生と死を通して行き来し、純粋な善悪のエナジィが渦巻くバイストン・ウェルにおいて、破壊と再生というものもまた、表裏一体なのであろう。

 

 

<◆聖戦士 ~地上人とオーラ力~ 了>

 

 

第10回「ミ・フェラリオ――チャム・ファウと聖戦士」(『聖戦士ダンバイン』より)