サンライズロボット研究所

指南講座
2025.06.06

サンライズロボット研究報告:コックピット編 第4回「ビュイ(後編)」(『重戦機エルガイム』より)

 

◆ビュイにあってフリッカにないもの

 実は、ビュイにはあってフリッカにない機能というものが存在する。それが、ビュイの後方にある機体とつながるデータシールドの接続装置である。パイロットの操作や思考(サイコミュ的なものだろうか)を電気信号として伝達するための太いケーブルが、ビュイとエルガイムMk-Ⅱを接続しているのだ。この接続装置はフリッカにはなく、その後部にはカウル後端と推進器のようなディテールがあるだけである。

 つまり、ビュイはエルガイムにも使えるが、フリッカはエルガイムMk-Ⅱに使えないという最大の理由は、その搭載されている機能の違いによるものだったのである。簡単に言えばiPhoneの充電ケーブルがライトニングからUSBタイプCになったのと似たような理屈だ(ちょっと違うが)。フロッサーのサイズ差は関係ないし、何ならビュイもそのままのカタチでエルガイムの首の下に収まる(仮に脚の先っぽが機体内部にぶっ刺さっていても問題ないだろう?)ハズなのだ。何しろデザイナーがそこに言及していないのだから。ということはつまり、現在主流となっているサイズが原因で互換性がないという説は間違いなのである!

 

 

 余談だが、『重戦機エルガイム 40th オフィシャルブック ドリーマーズ・アゲン』に掲載された最終話の絵コンテ(このページは富野由悠季氏によるもの)を見ると、このエルガイムへの乗り換えシーンでビュイがエルガイムに入るのかどうかを疑うメモが書かれていた。メカデザインやその設定について慎重なことで知られる富野監督をして不安になったのだから、我々凡人が疑問に思っても致し方ない。だが結論として映像を見ている限りはそんな些細な問題については気にならないし、先にも述べたとおり先っぽが多少干渉してもストーリーの腰を折るよりはそのままスルーするのがあの場合の正解であることは、今さらここで述べるまでもない明白な事実である。

 

 

 

◆ビュイの初期設定

 フリッカの後継機としてデザインされたビュイは、当初のデザイン案ではパイロットを覆うカウルがなかった。全周囲360度の視覚を確保したエルガイムMk-Ⅱではカウル状のモニターは不要であるとの判断だったようだが、やはり補助的な表示機能は必要ということでカウル形状のモニターがデザインされた。また固定武装も搭載され、フリッカよりも戦闘力が向上している点も見逃せない。この研究報告書では初期デザイン案を一部掲載しているが、40周年記念で発刊された『40th オフィシャルブック』では永野護氏による初期設定デザイン資料が余すことなく掲載されているので、ご購入された方は改めてそちらも参照してほしい。

 

 

◆スパイラルフロー ビュイのデジタル色見本

 スパイラルフロー フリッカと同様に、ビュイも現在のデジタル彩色見本を掲載しておく。機体のベースカラーはオレンジとなり、白と赤が基調となっていたフリッカとは大きく印象が異なる。ここで注意したのはオレンジとグレーに濃度の異なる二色が使われていることで、特にシート周辺や機体裏面の塗分けは見落としがちだ。キャノピーも航空機のような窓枠はなく、全面が透明のガラスとなっている点も特徴である。

 

 

 

 

◆スパイラルフロー ビュイ、総括

 ロボットアニメがかつてほど作られなくなって久しいが、ここまで見てきたように主人公が乗るバイク的な乗物がそのままロボットのコックピットになるという発想は良くできたデザインとギミックであると再認識できる。かつてはマシンを操るのにバイクの操縦技術は流用できるという謎の共通認識があって、それは『マジンガーZ』の主人公、兜甲児から始まる伝統であるが、それは異世界転生モノの先駆けである『聖戦士ダンバイン』の主人公ショウ・ザマを経てダバ・マイロードにも受け継がれている。

 またその一方で、永野護氏によるデザインだと思っていたフリッカが北爪宏幸氏によるクリンナップであったことから、純粋な永野デザインとなるスパイラルフローはビュイの方だったというのは衝撃的である。集団作業の成果であるアニメーション作品においてはよくあることだが、現在期間限定発売中の「重戦機エルガイム ドリーマーズ Blu-ray BOX」表紙イラストで、久しぶりに永野護氏によって描き下ろされたのがビュイだったのはそういう理由もあってのことなのだろう。『重戦機エルガイム』という作品の魅力と言えばもちろんその多くはヘビーメタルのデザインやその戦闘アクションであったろうが、40周年という今の目で見ると、スパイラルフローや艦船など周辺のメカデザインにもかなりの魅力があることにも気づかされる。

 いわば最新版の永野メカを見ることができたわけだが、この現在のディテールを踏まえた最新版スパイラルフロー ビュイとダバ・マイロード(その他のキャラも)は今こそ立体化すべきアイテムではないのか。フリッカと同スケールでの展開を切に望むところだ。

 

 

 

◇次回予告

『戦闘メカ ザブングル』よりウォーカーマシンのコックピットについての研究レポートをお届けします。

 

 

第1回「スパイラルフロー フリッカ」へのリンク

https://roboken.sunrise-world.net/laboratory/detail.php?id=9559

 

 

 

※参考資料

 

重戦機エルガイム オフィシャルサイト

https://l-gaim.net/

基本です。本作品に関するすべての情報はこちらからどうぞ。

 

スパイラルフロー ビュイのためのリンク集

プレミアムバンダイ関連商品ページ

https://p-bandai.jp/chara/c0139/?page=1&n=60&C5=AA&sort=1&srsltid=AfmBOor9Gk_XwKggLEsk7NXk-DT-vlvP0miWJMpKN1wWXhS5xKHeBIHD

言わずと知れたバンダイのエルガイム関連商品。リマスター版Blue-ray BOXやHI-METAL Rシリーズのエルガイム&エルガイムMk-Ⅱなど盛りだくさん。スペシャルコーティングHG 1/144エルガイム(プラモデル)も魅力的。

 

「重戦機エルガイム ドリーマーズ Blu-ray BOX」発売中

マスターネガスキャンからのHDリマスターによって作品史上最高の高画質を実現! ペンタゴナ・ワールドの物語が40年の時を経て今蘇る。BOXイラストは永野護氏により新規描き下ろし!

(2026年2月25日までの期間限定生産)

https://l-gaim.net/products01.html