サンライズロボット研究所

指南講座
2025.10.17

サンライズロボット研究報告:コックピット編 第12回「もう一つのバイストン・ウェル」(『ぱちんこCR聖戦士ダンバイン』より)<br />

第12回「もう一つのバイストン・ウェル」

 

 

 

 

◆もうひとつのバイストン・ウェル、そしてオーラ・バトラー

 これまで研究してきたのはTVシリーズとしての『聖戦士ダンバイン』と、OVAシリーズの『聖戦士ダンバイン New Story of Aura Battler DUNBINE』(「復活」「七百年の野望」「地上に近き者」)で描かれたオーラ・バトラーのコックピットについてである。

 しかし、バイストン・ウェルの物語というのはアニメ化されたものだけではない。2015年に発表された『ぱちんこCR聖戦士ダンバイン』(サミー)では、キャラクターデザインや一部のメカデザインなどが新しいビジュアルとなっているのだ。オーラ・バトラーの外観はオリジナルのままだったが、コックピット内部はキャラクターとともに新規ビジュアルが制作されることから一新され、より世界観に合わせた表現となっている。

 制作スケジュールや予算に厳しい制約があるテレビシリーズでは不可能だった機体ごとの個性がコックピット内でも表現されており、よりファンタジー風な装飾が施されることで騎士のための特別なマシーンであることが強調されている。

 

(ぱちんこCR聖戦士ダンバインhttps://www.sammy.co.jp/japanese/product/pachinko/2015/cr_dunbine/

 

 

 

 こうしたデザインのアップデート、あるいは設定解釈の更新は長寿のロボットアニメシリーズでは頻繁に見られる行為であり、言わずもがなガンダムシリーズのメカデザインでは顕著にそれが行われている。アニメ用設定ではなくともプラモデル用、あるいは別の製品用などとしてデザインが刷新されることは珍しくなく、原典へのリスペクトを残しつつもよりリアルに、より現代的にアップデートしていくことでコンテンツの寿命を延ばす効果もあった。だがオーラ・バトラー、あるいはバイストン・ウェルの物語において、その語り部はほとんどが富野由悠季氏であり、同氏の小説による展開が多かったためにそうした更新が行われる機会は少なかったのも事実である。

 また同時に、メカデザイナーである出渕裕氏による独自展開である『オーラファンタズム』での生体的なビジュアルは、オーラ・バトラーという「異形のロボットの在り方」を強く印象付けるきっかけにもなった。中世ヨーロッパ的な騎士の甲冑をモチーフにした意匠、目、翼、爪、装甲などの生物的な特徴がオーラ・バトラーの正解として認識されたことで、それらの要素を併せ持ったデザインがオーラ・バトラーを構成する要素として浸透した。

 ここに掲載するコックピットのデザイン画はそうした構成要素をバランス良く取り入れたリブートデザインとしては極めて優秀に見える。デザインを担当したのは『オーラファンタズム』や『オーラバトラー戦記』にも参加していた草彅琢仁氏であり、作品世界への理解度の深さも垣間見える。

 

 
『ぱちんこCR聖戦士ダンバイン』用に新規デザインされたコックピット内部。機体ごとの特徴をコックピット内部にも表現しており、特にパイロットがコックピット内で演技することが多いロボットアニメでは誰が何に乗っているのか視覚的にわかりやすい点は重要になってくる。地上世界的なマシーンと中世期のハンドメイド感がほどよくミックスされており、強獣という巨大生物から生み出された人型兵器という成り立ちも理解しやすくなっている。

 

 

◆オーラ・バトラーのコックピット総論

 オーラ・バトラーとは人の生命の力、オーラ力によって稼働するマシーンである。

 そのコックピットは操縦席としての機能が集中した精密なものである一方で、実際の機体操作はパイロットの無意識下での意思が伝達することで為されていたようにも見える。それは地上世界のマシーンがすべて機械制御で物理的に操作されているのと対照的に、人の魂の遊び場であるバイストン・ウェルのマシーンはもっと感覚的に操作が可能な物――つまり自身の身体の延長とも言える存在だからなのだろう。

 機体サイズが全高10メートル程度ということもあり、コックピットはオーラ・バトラーの胴体部分をほぼ占めてしまう。パイロットはオーラ・バトラーの中心に座り、その動力源にもなるという構造は、人の心を象徴する臓器が脳ではなく心臓であるのを連想させる。オーラ・バトラーにとって操縦者は機体の魂そのものであり、その操縦席であるコックピットは魂が宿る場所であるとも言える。

 こうした機体操作方法や機体との接続方法は本作以前にも散見され、たとえば『勇者ライディーン』(1975年)ではひびき洸(あきら)はライディーンと一体化し、そのコックピットはまさにライディーンの心臓の位置にあった(※余談ではあるがショウ・ザマがビルバインを拝受した際にライディーンのフェード・インを彷彿とさせる描写が見られる)。さらに後世の『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)では、専属パイロットとして選ばれた少年少女たちが人造人間エヴァンゲリオンの魂として脊椎に挿入されることで一体化し、操縦が可能となっていた。どちらも機体に受けたダメージがパイロットにも反映されるほどの同化を果たしていたが、オーラ・バトラーではそういう描写は見られない。

 だがその一方で、パイロットのオーラ力に対してストレートに反応し、そのオーラ力が暴走すればハイパー化という巨大化現象を引き起こした。この違いからわかるのは、オーラ・バトラーとは生体的な要素を多分に持ちながらも、あくまでも機械であるということだ。古代の超帝国によって作られた神秘のメカでもなければ、他天体から飛来した謎の生命体のコピーでもない。現代の人類が把握できる範囲での機械でありながら人の生命の力を具現化する神秘性を兼ね備えたマシーンであるという点が、まさにオーラ・バトラーの魅力の根源にある。そして、そのコックピットは正しく魂の座であり、聖戦士のあるべき場所と言えるのだ。

 

 

◇次回予告

次回からは「機甲戦記ドラグナー」編をお届けします。

スペシャルなイラストも作成中! こうご期待!!

 

※参考資料

『聖戦士ダンバイン』 オフィシャルサイト

http://www.dunbine.net/

本作品に関するすべての情報はこちらからどうぞ。

 

 

〇プレミアムバンダイ『聖戦士ダンバイン』関連商品ページ

https://p-bandai.jp/chara/c0138/?page=1&n=60&C5=AA&sort=1

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HG 1/72 トッドダンバイン
https://p-bandai.jp/hobby/special-1000018390/

HG 1/72 トカマクダンバイン
https://p-bandai.jp/hobby/special-1000017645/

HG 1/72 ダンバイン
https://p-bandai.jp/hobby/special-1000016307/

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☆指南講座:ダンバイン編のこちらの連載記事もご参照ください。

https://roboken.sunrise-world.net/laboratory/detail.php?id=9470